環来 015
ゆで卵を食べ終えた合格者の俺たち43人は再び飛行艇へ乗せられた。
「残った43名の諸君に改めて挨拶しとこうかの。
わしが今回のハンター試験審査委員会代表責任者のネテロである」
ホールに集められたが、ゆとりあるスペースだ。406人からこんなに減ってしまったんだなぁ。
「本来ならば最終試験で登場する予定であったが、いったんこうして現場に来てみると、なんともいえぬ緊張感が伝わってきていいもんじゃ。
せっかくだからこのまま同行させてもらうことにする」
金持ちの道楽かよ。普通の協会のほうの仕事は大丈夫なのか?
「次の目的地へは明日の朝8時到着予定です。
こちらから連絡するまで、各自自由に時間をお使いください」
豆っ子の説明を受けて、それぞれ解散した。
「ゴン!! 飛行船の中探検しようぜ!!」
「うん!!」
ちみっこたちは早速うきうきと出かけて行った。
俺たちの方はぐったりしていて、肩を落としながらホールの出口へ向かう。
「オレはとにかくぐっすり寝てーぜ」
「私もだ。おそろしく長い一日だった」
「寝床ってあんのかな……でも風呂も入りたい……」
ぐったりとしながら歩いていると、クラピカが神妙な顔持ちになる。
「……しかし、一つ気になるのだが」
「ん?」
「試験は、いったいあといくつあるんだろう」
「あ。そういや聞かされてねーな」
そうだ、確かに聞かされていない。
と思ったところに割り込んでくる声。
「その年によって違うよ」
トンパだ。ハラを知ってる俺にとってはめんどくさいからできるだけ関わりたくないが、こいつにとってカモにできそうなルーキーがもう俺たちしか残っていないから、なんだかんだと手を出してきているに違いない。
俺はトンパを無視して、毛布を貸し出してくれていないか探すことにした。ベッドは無理でも、そっちは貸し出してくれるんじゃないかな。
漫画の中でレオリオとクラピカが持ってなさそうな布をかぶって寝ていたはずだし、教官たちはうまそうなもん食ってたし、設備整ってそうだもんな。
もしかしたらシャワーもワンチャンあるのでは? シャワー、シャワー……
と、うろうろしていたら。
「こ、ここどこですかね……」
右も左も同じような通路っていうの、よくないと思います!
外の景色が見える窓辺に出てきたぞ。でも、誰もいない。ゴンとキルアがいるところとは違うか、もしくはジジイに連れ去られたか……。
「毛布も風呂もあきらめるからレオリオのところに帰りたい……」
取り敢えず来た道を戻れるところまで戻るか。
一番初めに集まった部屋は多分先頭だと思うんだよね。ホールっていうか、ラウンジっぽかった。今考えれば。その時はだるくてなんも考えてなかったけど。
ということで、飛行艇の進行方向に向かって歩く。
扉がところどころにあるのだが、これ個室じゃないの? 使っちゃダメかな。後で料金請求されてもほぼ無一文だし、体(物理)で払うことになりそうだから止めておこう。
そうこう考えているうちに一番初めに集められたホールだかラウンジだかのところについた。誰も居ねぇ……。
だが、ここまで来ると近くに人の気配がある。ざわざわ、というほどではないが、さわさわと音がしている。
角を曲がると、目の前に豆っ子がいた。
「あ、マ、う、運営の人」
まめ。いや、本人に向かって豆と呼ぶのは流石に……。
「おや、406番さん。どうかなさいましたか?」
「えっと、もしかして毛布みたいなもの貸してもらえたりするのかなと思って」
「鋭いですね。今から倉庫にとりに行くところです」
「手伝いますよ」
運ぶ時に一番きれいそうなやつ選んで自分の分にしよう。
+--+--+--+
全部新品だったんだけどこの費用どっから出てるの。まじで。
「レオリオ、クラピカ。毛布だよー」
三枚抱えて二人を見つけ出す。二人とももううつらうつらしていた。
「ん? これは……どうしたんだ」
「まめのひとから借りてきた。使っていいんだってさ」
「ありがてぇ。これでもう少しまともに寝れるぜ」
二人とも喜んでくれた。めちゃくちゃ重たい箱を運んだ甲斐があったぜ。
起きてるやつも随分いるが、無駄に気を張っていても仕方ない。
レオリオの隣に腰を下ろし、俺も眠りにつくことにした。
塔をどうやって降りるか。予測できないブラックボックスはつらいぜ……。
続く。
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あの毛布ってみんなかぶってるから支給品だよなー、と思って。でもシャワーは使わせてくれなさそう。変なところでケチ。