環来 021



 自分の406、ターゲットの135、それから余りの217。
 これを守りきれば次の試験に行ける。最終試験。
 全部で七点分のプレートを眺めながら、残り四日のことを考えている。

 殴り飛ばした男はプレートを奪ったあとも息があったので、ヅラを胸の上に置いて、そのまま置いてきた。拠点にしていたところへ戻ってぐっすり寝て、起きたところ。寝る前に取っておいた果実をがじり。
 どうするかな。
 うーん。
 よし。

 他の受験者を探してまわろう。

 そうと決まれば。
 プレートと果実を鞄にしまいこんで、いざ出発。
 島をまわっていれば、誰かに会えると思う。ヒト探し兼観光ってところか。
 他の受験者と言えば、キルアとか、ハンゾーとか。ええっと、あとは誰が受かるんだったかな。コロポックル……なんかちがう。ポックルか。あいつも合格組だし、もう初日かそこらでプレートゲットしてるはずだし、会えたらいいな。ヒソカやイルミには会わないようにしないと……というか、イルミは土に潜ってるからそもそも会えないか。他の受験生には会いたくないな……どうしたらいいのか判らない。
 ゴンや、レオリオとクラピカにも、会いたくない。気まずい。
 あっ、思い出した、あの洞窟の件はどうしたらいいんだ。自分のことに必死で忘れてたぞ。ゴンに余計な仕事を増やしたくないし、だからと言ってじっとしてられるわけがないだろうし……。まぁ考えててもなにも解決しないんだけどさ……。
 意気揚々と歩き出したが、すっかり落ち込んでしまった。どうしてくれるんだ。


 とぼとぼと川沿いに歩くこと半日。
 誰にも会わない……。歩いてみるとけっこう広くて、この中に30人弱しか居ないのだから、当然かもしれない。
 気配を隠す努力もしていないから、誰かが襲ってきてもおかしくないんだけどな。
 夜が近付けば寝床を探さねばならないし、もう少ししたら人探しから寝床探しへジョブチェンジす…………誰かいるぞ。ラッキー。誰だろ。
 ヒソカだった。帰ります。
 踵を返して来た道を戻る。
「なんだい、つれないね。プレートは揃ったのかい」
 何か言ってるけど聞いてない聞いてない。俺は誰とも会わなかった。
 ヒソカも深追いするつもりはないらしく、追っては来なかった。そういうキャラで助かった。

 また小一時間ほど歩くと、違う奴の気配と出会った。今度は大丈夫だろう。どれどれ。
 気配がする方を探しにいく。
 見えてきたのは、銀髪の少年。
「おー、キルアくんではないかね」
「なんだ、メイじゃん。
 オレのプレートを獲りにきたの?」
 何も構えず自信満々でそう言うキルア。俺は苦笑。
「まさか。キルアから獲るだなんて無謀なことしたくないね」
「わかってんじゃん」
「実は六点分集まったから、誰か知り合いに会わないかな~、って探してたところなんだ」
「マジかよ! 先に言えよな~」
 一矢報いた感じで楽しい。子供と張り合ってどうするという理性からの呼び掛けは無視。がはは。
「そう言うキルアはもう集まってるのか?」
「ったりめーじゃん! 楽勝だったぜ」
「さすがだな。俺は焦って探したよ。見付かったのはラッキーだった」
 そう言うと、キルアの機嫌が少し良くなったようだ。ふふ、おこさまだな。
メイはさー、期限までどうすんの?」
「んー、そうだな、取り敢えずは島の中を観光してまわるつもり」
「観光~? そんなに見てまわるところあるのかよ」
「わからないけど、夕日と朝日は綺麗そうじゃないか? まわりは全部海だし」
 キルアは全く興味無さそうだ。
「見てまわるついでに、他の受験者に会ったらいいなぁ、と思って。レオリオ達にもまだ会ってないんだ」
 本心はあんまり会いたくないというか後で嫌でも探しまわる事になるんだろうけど。
「わざわざ探しに行くのか? スゲー余裕かましてんじゃん」
「よゆう? あー、いや、そんなつもりじゃないんだけどな。じっとしてる方が狙われそうで怖くてさ」
「返り討ちにあわないように気を付けろよな。メイだって受かりたいんだろ?」
「勿論」
 ここまで色々頑張ったし、今後のことを考えても是非とも合格したい。
 すっ、と風が吹いて空を見ると、夕方が近くなっていた。そんなに探して歩いてたのか。
「キルア、俺そろそろ夕日ポイント探しに行くことにするわ。あんまり長居してもキルアの邪魔になりそうだし」
 サバイバル初心者の俺が一緒にいては、邪魔だろう。
「えー、もう行くのかよ」
「俺が居ない方がやりやすいだろ? その気になったらキルアも絶景ポイント探して俺に教えてくれよな」
「そんな趣味ねーよ!」
「ははは、じゃあまたなー」
 手を振って、俺は日が沈む方へ歩き出した。
 久しぶりに普通の会話ができて文明を取り戻した感じがある。
 水平線へ沈む夕日なんて見たこと無いから楽しみだな。良さそうな寝床も見つかるといいんだけど。


続く。




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川もあれば洞窟もあるし山も草原もあるっぽいので、絶景ポイントは結構多いと思います。
※漫画読み直したら時系列間違ってたので修正しました